はじめに
頑張れば、何かがあるって、信じてる。nikkieです。
ご存じの方もいるかと思いますが、先日のPyCon JP 2019で私はスタッフをしていました(主にコンテンツチームで活動)。
大きなお祭りを終えて一息ついた私の目に「PyCon JP 2019のトークはレベルが低かった」という旨の感想が留まりました。
この感想を見てからずっともしゃもしゃしていたのですが、Taiwan、Singaporeと海外のPyConに参加して気づいたことがあるので、記事として書くことにしました。
前提
- この記事はnikkie個人の見解です。所属する企業やコミュニティ(例えばPyCon JPスタッフチーム)の見解を代表するものでは決してありません
- PyCon JPにはスタッフとして参加しています。当日のトークの枠のうち、半分程度しか聞いていません(10月に入り、YouTubeで数本見ています)
- PyCon Taiwan(以下、PyCon TW)に2日間(9/20〜21)参加しました
- PyCon Singapore 2019に、カンファレンスの2日間(10/10〜11)とチュートリアル半日(10/12)参加しました
TL; DR
- 機械学習のトークが多いPyCon TW, SGに対し、多様性を尊重するPyCon JPという特徴がある
- PyCon JPでは最先端のトピックが少ない。技術的なレベルが低いという指摘であれば該当すると思われる
- 「レベルが低い」のであれば、それは私たちコミュニティ全員の問題
- あなたが行動を起こせば、「レベルが低い」状況は変えられる
PyCon JPと海外PyCon、その違い
タイムテーブル
傾向
- PyCon TWは機械学習のトークが多い。実務のノウハウ共有というより研究発表という印象を受けた1
- PyCon SGも機械学習のトークが多い。肩書きを見るに実務で携わっている人が話している印象
- PyCon JPは機械学習に偏っていない。多くのジャンルからトークを採択している(多様性)
- プレゼンテーションの巧拙という観点では、どのPyConも私の聞いた範囲では差はなかったように思います(めちゃくちゃ練習してきた方のプレゼンは目を見張るものがありますね)
機械学習に偏っている/偏っていないは私(一参加者)の経験ベースで述べています。
同一の発表時間に機械学習のトークが複数あるか否かを数えて確認できるのではないかと思います。
海外PyCon(TW, SG)と比較して、PyCon JPのトークには最先端の技術を扱ったものは少ないという結論です。
特にPyCon SGは最先端のトピックが多く登場したと思います。
「レベルが低い」。では、どうする?
最先端の技術を扱ったトークが少ないことと、それがいいことなのか悪いことなのか(価値判断)は分けたいと思います。
最先端のトピックが少ないことが100%悪いとは私は思っていません(PyCon JPのらしさの1つかなあと肯定しています)。
たしかに、最先端のトピックを期待している人にとってはマイナスでしょう。
しかし、1つの領域を最先端まで掘り下げると、関心を持つ人は狭まります。
多様性を尊重する傾向のあるPyCon JPは、「ちょっとこの分野興味あったんだよね」という気持ちでトークが聞きやすくなっているのではないでしょうか。
次に「レベルが低い」という発言ですが、サービスを享受する〈客〉という立場でのクレームのように感じました。
PyCon JPにはお客としてではなく、コミュニティの一員、PyCon JPを作り上げる一人として参加したら、もっと素敵なイベントになるんじゃないかと思います。
PyCon JPはボランティアのスタッフで運営されています。
参加費はありますが、払ったお金からスタッフの給料が出ているわけではありません(スタッフは無給ですが、やりたいからやっています!)
ここが一般の商業施設との違いでしょう。
私自身は、お客としての扱いを期待するのではなく、コミュニティを盛り上げる一員として、無料であれ有料であれ勉強会に参加しています。
PyCon JPの外側でもコミュニティの一員として行動することはできます。
「レベルの低い」と思うトークがあったのなら、それを補強するブログやQiita記事を書いてはいかがでしょうか。
「レベルが低い」という問題に気づいたのなら、あなたの知識を使って問題の解決に取り組めば、コミュニティの状態はきっとよくなるでしょう。
ただ発表者も人間なので、自分の知識をひけらかしてマウントを取りに行くマサカリではなく、一緒によりよいものを作ろうという配慮のあるやさしいマサカリだと非常にありがたいと思います。
「レベルが低い」の言いっぱなしはもったいないと思います。
問題に気づいたのなら、その問題を解決する人を待つのではなく、自分から動けば確実ですよ。
大きい問題なら、声を上げましょう。
微力ながら私もお手伝いしますし、コミュニティの力を借りて解決していきましょう。
以上が私の気づきです。
行動を伴わない「レベルが低い」については、私はあまり気にしないでいこうと思います。
「レベルが低い」と感じたあなたに
- PyCon JP 2020の「レベルを引き上げる」ために、あなたにとっての理想のトークプロポーザルを出してみませんか?
- PyCon JPではスタッフを募集しています。あなたにとって理想のPyCon JPがあるのでしたら、スタッフの一員として直接実現してみませんか?4
- スタッフは大変そうという方、例年、トークプロポーザルのレビューアーも募集しています。PyCon JP 2020のレビューにあなたの知識を貸していただけませんか?
こういった案内は今後されると思いますので、PyCon JP Blogをウォッチするのをオススメします。
最後に
この記事を読んで思うところがある方は、コメント欄や@ftnext 宛にアウトプットしてみてください。
PyCon JPをよくしたいという気持ちは互いに持っている(ただ「よくしたい」の具体が違う)と思うので、どこかの勉強会や、PyCon JPのmtgで直接お話ししましょう。
追記:いただいたフィードバックへの回答
私自身が登壇者であることの扱いについて(10/16)
DMにて私が登壇者である旨の記載がない点について問合せをいただきました。
ご指摘の通り、「Anaconda環境運用TIPS」という15分トークをしています。
PyCon JPにはトークを聞く参加者としての参加が一番多いため、「レベルが低い」という声がトークを聞く参加者から出たのではないかと仮定してこの記事を書きました。
トークを聞く参加者であっても、「レベルが低い」と感じたのなら、行動できることはあるというのが伝えたかったことです。
また、直近の海外のPyConにトークを聞く参加者として参加していたため、トークを聞く参加者が暗黙のうちに前提になっていました。
記事中で「私も登壇者ではあるが、この記事はトークを聞く参加者を前提に書く」旨の明確な断りをしなかったために混乱を招いたこと、お詫びいたします。申し訳ありません。
なお、登壇者として自分のトークの振り返りは、実況ツイートなどを確認した上で、この記事とは別に執筆予定です。
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例えば、https://tw.pycon.org/2019/en-us/events/talk/865694486351577331/↩
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Google検索をすれば解説記事は見つかると思います。例えば、BERTとは何か?Googleが誇る最先端技術の仕組みを解…|Udemy メディア↩
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自然言語処理に従事している方にとってはBERTは最先端ではない(後続の手法が日々登場している)と思いますが、その分野の専門外から見てというニュアンスでの「最先端」です↩
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私はPyCon JP 2018のLTにプロポーザルを出しました。採択の通知がズルズルと延び、何の告知もないまま1か月遅れたのを経験し、「これはひどすぎる。できることから手伝いたい」と思って、2019はスタッフをしています↩