nikkie-ftnextの日記

イベントレポートや読書メモを発信

大規模言語モデルって、だいぶ『#アイの歌声を聴かせて』のシオンさんじゃね?(アイうたのネタバレあり)

はじめに

リリイベありがとうございました! nikkieです。

直近でエンジニアがアニメから得た学びをLTします。
このブログで何度も取り上げている『アイの歌声を聴かせて』の話になるのですが、話したいことが多すぎて持ち時間に収まりきりません。
そこで、ボーナスコンテンツとして、機械学習の技術周りで現実とアイうたがクロスオーバーしていて、個人的にとてもおもしろいぞという話をお届けします。

目次

『アイの歌声を聴かせて』

景部高等学校に転入してきた謎の美少女、シオン(cv土屋太鳳)は抜群の運動神経と天真爛漫な性格で学校の人気者になるが…実は試験中の【AI】だった!
シオンはクラスでいつもひとりぼっちのサトミ(cv福原遥)の前で突然歌い出し、思いもよらない方法でサトミの“幸せ”を叶えようとする。(ストーリーより)

最後にきっと、笑顔になれる」、生涯推していく作品です。

過去にテックなポッドキャストでも話していて

今回はもっと技術に突っ込んだ話をしていきます。
ただし、「大規模言語モデル=アイうたのシオンさん」という見方は、(技術者界隈で確立した見方では決してなく、)私の夢想です。

アイうたに関してはネタバレありでお送りします。
見放題配信をやっているので、未見の方はまずはぜひ見てから先に進んでください(もしくは引き返すのを推奨)

プロンプト

この記事では、ChatGPT・Claude・Gemini(や同じくらいの賢さのオープンソースのモデル)を指して、大規模言語モデル(LLM)と呼びます。

LLMには言葉でお願いしますよね。
技術的には「プロンプト」と言います。

ファインチューニングでタスク専用モデルを作らずに、1つのモデル+プロンプトで済ませられるというのは便利です。
しかも、プロンプトは自然言語で済むという!

吉浦監督の過去作の『イヴの時間』ではAIへのお願いは(シェルの)コマンドっぽさがありました。
アイうたでは自然言語でお願いしていて、現実世界のプロンプトに通じる要素を感じます。
「そいつ(シオン)に(キスするように)命令したんでしょ」とか、プロンプトがあってAIが動いている前提ですよね。

現実には、プロンプトを知ろうとする攻撃「プロンプトインジェクション」があります1
劇中ではシオンをAIと知っても、インジェクション攻撃はしていないんですよね。
ストーリー展開の都合があるかもなんですが、プロンプトインジェクションって「やらないのがマナー」みたいな感じで規制するしかないのかなと妄想します

なお、シオンさんは「プロンプトインジェクション」を遠回しに拒んだ2と解釈しています。賢い!

エージェント

アイうたの世界ではAIがシオンさんだけでなく、身の回りの至るところにいます。
例えばキッチンにも。
冒頭でサトミが朝ご飯の準備をしていました。

コンロAIや炊飯器AIは「エージェント」っぽいなあと思います(もちろん、シオンさんも)

(エアコンの自動温度調整の延長で数段賢くなった感)

そして、朝ご飯の準備では、コンロAIと炊飯器AIは協調動作する必要があります。
複数のAIの協調動作!

極めつけはシオンの歌唱シーン!
シオンが歌うだけでなく、音楽や照明など多数のAIが協働しているんですよね!!(スピーカーAIや街灯AI)
シオンの歌唱はシオンだけじゃなくて、たくさんのAIのセッションとして見ています。

なお、シオンさん、他のAIには自然言語でお願いするらしいです(吉浦監督への質問の中で聴いた記憶)。
プロンプトを使っている!
つまり、こういうことじゃん

Copilot

副操縦士という意味のCopilot。
GitHub Copilotのように、AI(LLM)が副操縦士として人間とペアになるわけです

おそらくなのですが、作中でもAIと人はペアになっていると見ています。
そしてAIとペアになることで、より人間の能力が引き出されているんじゃないかと思われるのです。

  • トウマ先生の高校生離れしたプログラミング能力
  • ゴッちゃんが運転するバイク
  • バスで流れるCM、「(あの靴)うちらモニタしてたやつじゃん」「タイムよくなったんだよ」。AIシューズさんサポートしていそう
  • サトミの料理シーン(ここまでいくと人を含めたセッションですね)

モデルマージ

アイうたで予言されていたと思われます(※過激派。異端の言説)

モデルマージはこちらで知りました。

アイうたにおいて、転校生AIシオンさんは、モデルマージで誕生していると思われます。

  • 美津子さんたちが実証実験に用意していた女子高生AI"シオン"があった(もともとハードウェアに入っていた)
  • ネットワーク上にいる元はAIトイのAIが、サトミを幸せにしたい一心で女子高生AIのハードの中に入り込む
  • 美津子さんたちが開発していた"シオン"と、元はAIトイのAIが合体 👉 サトミを幸せにしようとするAIシオン爆誕

(これは監督への質問で、「もともとハードウェアに入っていたAIはどうなったのか?」への答えの記憶に基づきます)

最後の合体のところが、モデルマージです!!(荒い鼻息)

元はAIトイのAIってハードウェアを制御する能力はほとんどないと思うんですよ(ネットワークを漂っていたわけで)。
ですが、シオンさんは軽快に身体を動かしているわけで(例:ユー・ニード・ア・フレンド)、これは美津子さんたちが開発したAIの力によるのかな3と私は見ています

要は、サトミを幸せにしようとする転校生AIシオンさんは、以下のようなモデルの足し算で誕生した(と私は考えている)ということです

ロボットと「サトミを幸せにする!」のマージなんじゃ〜!
(これはアイうたを見た方と話したいトピックです)

終わりに

アイうたファンの私からすると、大規模言語モデル周りの技術トピックがアイうたで描かれていたように思えてならないと一本書きました

アイうた世界には至るところにエージェントとしてのAIがいます。
人は自然言語(プロンプト)でAIたちとやり取りしますし、複数のAIと協調動作も可能です。
そんな世界で人はAIをCopilotとして活用しているように思われます。
そして、シオンさんの誕生はモデルマージだったのです...!

2021年時点では「アイうたの世界、2020年代ではどうやっても実現しないだろう」と思っていました。
ところが、ここ1年のLLMの発展を見ると、未来は意外と近くにある感がしてなりません。

2022年にはシオン・プロジェクトと銘打って、シオンさんのソフトウェア v0.0.1を作りました。
LLMを見て、人間を幸せにするシオンさんのようなAI(※ソフトウェア)が作れる可能性が大きくなっていることにワクワクしますし、(仕事でコードを書ける環境であれば、なにがなんでも機械学習を仕事にしたかったわけではない私が)今は仕事でもプライベートでも機械学習をがっつりやりたいと思えています。


  1. ジェイルブレイクとも言われるかも(私の中ではあまり整理できていない用語群です)
  2. 「その質問、命令ですか?」
  3. なんとこの点でも「無駄じゃなかったのね、私のしてきたこと」だ...