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読書ログ | 『Clean Agile』1章で言われる、アジャイルの「誤解や不正利用」ってどんな事例だろう? 著者のUncle Bobのブログものぞいてみて

はじめに

歌おうシオン、nikkieです。

Uncle Bobによる『Clean Agile』を読み返していて、気になった点をアウトプットします。

目次

『Clean Agile』 1章

https://www.tumblr.com/asciidwango/631315320701960192/clean-agile

Uncle BobによるCleanシリーズの1冊(4作目)。
アジャイル開発(とくにXP)について書かれています。

1章の目次は以下です。

第1章 アジャイル入門
 アジャイルの歴史
 スノーバード
 アジャイルの概要
 サークルオブライフ
 結論

Uncle Bobはアジャイルソフトウェア開発宣言に携わっているんですよね。

Robert C. Martin」の名があります。
「スノーバード」は開発宣言の地です(スキーリゾート)。
最初に読んでいて、「アジャイルソフトウェア開発宣言に関わった本人からアジャイルについて学べる本なのか、ヤバいじゃん!」とすごく興奮したのを思い出します。

アジャイルの誤解や不正利用

この本を執筆した目的にも関わるそうですが、「誤解や不正利用」という言い回しが登場します。

残念ながら、ムーブメントの知名度が高まると、誤解や不正利用が発生するようになり、ムーブメントの名前が不明瞭になる。(第1章 Kindle の位置No.227-228)

ムーブメントの例はアジャイル以外にオブジェクト指向1
ここで言っている「誤解や不正利用」から、マーティン・ファウラーの「意味の拡散2」(意味の希薄化3)を思い出しました4

アジャイルソフトウェア開発宣言に関わったUncle Bobが本書を書いた理由が「事実関係を正す」ため(序文より)。
開発宣言に立ち会った立場から、誤解や不正利用に対して本来の意図を伝えるというアプローチです。
まさに副題にある「基本に立ち戻れ」ですね。

Uncle Bobのブログより「Agile is not now, nor was it ever, Waterfall.」

誤解や不正利用と言われても私には事例がピンときません。
Uncle Bobのブログを読んでいる中で5、左サイドの記事一覧の中のそれっぽい記事で目が止まりました。
Agile is not now, nor was it ever, Waterfall.

Uncle Bobは、Mediumに書かれた「Agile Is The New Waterfall」に反論しています。

この2つの記事ですが、GPT-4の要約をもとに、拾い読みしました。

興味深かった点:サークルオブライフ(12のプラクティス)から「選ぶ」

「The One Point.」でUncle Bobは「Agile Is The New Waterfall」のある1点にだけ同意しています。
それは「Bring in the bare minimum amount of process.」(これ以上欠かせない最小限の量のプロセスを取り込む)。
「小さく始める」という価値観のことですかね。

その後、Uncle Bobはサークルオブライフの12のプラクティス6を挙げていきます。
これらは『Clean Agile』でも3章から5章を使って説明していて、記事と書籍は構成が似ているように感じました。

「12のプラクティスを全て採用するのか?」という問いに対しては、「もちろん違う(Of course not.)」と答えています。

Again, choose wisely! (Conclusion)

小さく始める。サークルオブライフは理想だが、最初はプラクティスを選ぶ。なるほど〜

Mediumの元記事についてはヘロヘロScrum7だったのではないかと推測しています。

Scrumが導入されるときは、技術的プラクティスに十分に注意を払おう。(「ヘロヘロScrum」より)

このあたり技術的プラクティスに注意を払うためにも、一度に全部導入するのではなく、チームに必要なものを選ぶということになるということなのかな〜8

議論は続く

Mediumの「Agile Is The New Waterfall」を見ると、反論への反論記事がありました。

It got a lot of traction (nearly 100K people bothered to take a look), a lot of misunderstanding, and even raised the ire of luminaries such as Uncle Bob.

Uncle Bobのような大家の怒りを買いさえもした」とUncle Bobのエントリに言及しています。

今回は両者の議論に深く立ち入りません。
ここまでで、誤解や不正利用がどんなものか知りたかった私には十分な事例でした。
こういった出来事が他にもあり、アジャイルソフトウェア開発宣言の当事者として意図や基本を1冊かけて伝えたかったのだと推測しています。

終わりに

『Clean Agile』1章で見かけた、アジャイルの誤解や不正利用が気になり、Uncle Bobのブログに見つけた記事を確認しました。

  • Agile Is The New Waterfall」という記事に「Agile is not now, nor was it ever, Waterfall.」と反論
  • ラクティスは選んでチームに導入しよう

『Clean Agile』を読むという目的からは脱線もいいところですが、どんな事例か1つ明確に分かったので疑問は解消しました。
誤解や不正利用の裏キーワードは「意味の拡散」な気がします。

P.S. ありがとう、GPT-4

記事をざっと掴むのを非常に助けてくれました。
Web Pilotプラグインさまさまです9

また、Uncle Bobのブログの左サイドのフィード(記事のタイトル一覧)からアジャイル開発に関係する記事を抜き出してもらいました。
これらも誤解や不正利用に関わっていそうです(積ん読


  1. オブジェクト指向でなぜつくるのか』を読んでいたため、誤解や不正利用の雰囲気がなんとなくイメージできました(第3版「第7章 汎用の整理術に化けたオブジェクト指向」)
  2. ref: 意味の拡散 - Martin Fowler's Bliki (ja)
  3. twadaさんによる『テスト駆動開発』付録Cでの訳
  4. Clean Architectureも4つの同心円の図に引っ張られる形で、誤解や不正利用の渦中にあるように思われます(Uncle Bobの意に反していて、ちょっと皮肉な状況かも)
  5. The Clean Architectureを読んでいたときの出来事です。
  6. 12かどうかは諸説あるらしく、わたし、気になってます!
  7. 記事中に「意味の拡散」へのリンク!
  8. 全く経験がない中で技術的プラクティスを選ぶのも難しいのではと思ったのですが、そこはコーチ的な人を雇うなり、社内で先行する他の開発チームを見つけるなりすれば解決しそうです
  9. きしださん、ありがとうございます