nikkie-ftnextの日記

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「Agile Is the Steering Wheel, Not the Gas Pedal」を読みました。加速装置じゃなくてかじ取りの装置!

はじめに

"はやさ"は魔性だ1 nikkieです。

直近読んだ英語記事についてのアウトプットです。

目次

Agile Is the Steering Wheel, Not the Gas Pedal

The Software Architect Elevator』といった著作があるGregor Hohpe氏が執筆された記事。
氏はEnterpriseにおけるアジャイルについて述べています。

This is Part 2 of my mini-series on Simple Agile for Enterprises.

車にまつわる単語

車の比喩を使って、アジャイルに関する誤解を解説していきます。
車にまつわる単語として以下を押さえると読みやすいです2

  • steering wheel:車のハンドル
  • gas pedal:(自動車の)アクセル

この2語を押さえると、タイトルは「アジャイルはハンドルであって、アクセルではない」となります

記事の結論

Wishing for What you Value」より

Traditional IT is measured by delivering projects faster and at lower cost.

A straight line appears to be the most efficient way to get there, so anything that zig-zags must be less efficient in their minds.

  • 伝統的なITはより速くより低コストでプロジェクトをデリバリーすることで評価された
  • それを達成するために、一直線の道が最も効率的な方法に見える
    • ジグザグの道は効率的でないように考えられている

Traditional ITがアジャイルをこの価値にマッピングしたのが誤解と述べています。

They haven’t realized that going zig-zag can be the more efficient approach when your road has a lot of twists and turns.

意訳 伝統的なITは、進む道がたくさん蛇行しているときにジグザグに進むことが最も効率的な方法ということに気づいていない

一直線ではない道を行く

私の理解:
目の前の道は一本道ではなく曲がりくねっていて、一本道を駆け抜けるようなことができない。
そこをがむしゃらにスピードを出して進むのではなく、方向転換を重ねながら進むのが(一直線だと思い込んでいると想像しがたいが)結果的には一番速く目的地にたどり着ける

「そんなに蛇行した道を私も進んでいるのかな」と思ったのですが、「公道での自動車レース(an auto rally)」のたとえはしっくり来ました。
周りを走る他の車(同種のビジネスを営む、すなわち競合の他社)もあって、進路は蛇行せざるを得ないということなのだと思います。
「こう進みたかったけど、他の車の動きを見たら進み方を変えないといけない」とかありますもんね。

また、記事の副題も一直線ではない道と繋がっています。

Hitting the wall faster is unlikely to do you any good.

意訳 より速く壁にぶつかることは、あなたたちに全くよさをもたらしそうにない

目の前の壁に気づいて、ハンドルを切って進み続けたいですよね。
高速でぶつかったらダメージは深刻でしょう。

記事中には(現代ではKaggleのコンペでおなじみの)Titanic号の事例も言及されます。

The Titanic was fast, not agile.

Titanic号は速かったですが、氷山をよけられずにぶつかり、沈没してしまいました。

アジャイルとスピード

アジャイル=速い ではない ということは、この記事中で繰り返されます。

「fast development」という名前ではなくて「Agileアジャイル)」

I routinely remind folks that the method isn’t called “fast development” for a reason.

スピードはアジャイルであることの主目的ではない

This might give a slight hint that speed isn’t the main purpose of being agile.

読んで思ったこと

車の比喩のルーツは、ケント・ベック氏?

エクストリームプログラミング』の第2章が「運転を学ぶ」です。
Gregor Hohpe氏記事の「アジャイルはハンドル」という主張と重なるなあと思いました。

ケント・ベック氏が母親から車の運転を学んだときの母親のセリフ

「運転というのはね、車を正しい方向に走らせることじゃないの。常に注意を払って、こっちに行ったら少し戻して、あっちに行ったら少し戻して、そうやって軌道修正していくものよ」(『エクストリームプログラミング』 第2章)

ハンドルを切って軌道修正
ここはスピードには全く言及していませんね

ジグザグの道ってVUCA?

変化の激しいVUCAの世界と言われますが、

変化が激しいからこそ、目の前に壁がないと思っていても次の瞬間には出現しているなんてこともあるのかなと思います。
変化が激しいゆえに、障害物のない一直線の道という状態はほとんどなくて、障害物をよけながらジグザグに進まざるを得ない、それをアジャイル(ハンドル、軌道修正)を使ってうまくやっていくってことなんじゃないでしょうか。

終わりに

Agile Is the Steering Wheel, Not the Gas Pedal」(記事)の読書(?)ログでした。

アジャイルは車でいうハンドル。
アクセルを踏み込むようなイメージではなく、ハンドルを切って軌道修正しながら進むイメージ。
一直線で猛進できることはあんまりないから、ハンドルを切ってジグザグに進む方が結果的には速い。

P.S. 記事を読んだきっかけはこちらのスライド

XP顧問としてお世話になっている角谷さんのスライドです。


  1. ハイキュー!! 稲荷崎戦で非常に印象的だった一節。4期の24話と思われます
  2. いずれもウィズダム英和辞典より